前回の記事を書いてから、ずっと考えていることがある。
「もし、あの時あんなことが起きなければ、今の父はどうなっていただろうか」と。
かつて、両親は自営業で婦人靴の加工業を営んでいた。
朝8時から夜10時まで、休みも返上して働く背中を見て育った。やればやっただけ収入になる。端から見れば、それなりに余裕のある家だったはずだ。
けれど、2005年。あの夜を境に、私たちの時計の針は狂い始めた。
睡眠薬を大量に飲んだ姉
夜10時過ぎ、姉の子供からかかってきた一本の電話。
「ママがリビングで倒れた」
慌てて家を飛び出していった両親が戻ってきた時、顔は土色だった。
「朋美が睡眠薬を大量に飲んだ」
「いつ目を覚ますか分からないって言われた」
面会に言ってもICUのベッドで動かない姉。父は「俺が代わってやりたい」と泣きながら、何度も何度も姉の足をさすっていた。
その後、奇跡的に姉は目を覚まし、「ジジ、家に帰りたい」と言った。
その一言で、すべてが元通りになると信じたかった。