6前の父は、それまで飼っていたジャックラッセルテリアを連れて、朝ラジオ体操に行き2時間散歩しているんだよと話すのが自慢だった。
父の異変は大切にしていたジャックラッセルテリアが亡くなってから。
実家に帰るのは数ヶ月に一度だったが、
両親は今の都営住宅に引っ越して5年ほど経つ今も、私は一緒に暮らしていない。
だから父の認知症の進行も、母の疲れも、ほとんど母の電話や実家に帰った時にしか知らない。
最近、母がため息まじりに話す内容が増えた。
「お父さんがまた、『お前が年金使い込んでるんだろ』って言うのよ…」
父は自分の年金が減っていると思い込んでいるらしい。
実際は国民年金だけで、貯金はほとんどない。
それでも父の中では、毎月振り込まれるわずかなお金が「誰かに取られている」ことになっている。
その「誰か」が、一番近くにいる母になってしまう。