水曜日の昼過ぎ、iPhoneが震えた。
画面に表示されたのは、母が以前入院していたときにお世話になった、古い友人の名前だった。
父がデイサービスに出かけ、母がひとりになる水曜日。
友人たちはその時間を知っていて、孤独を紛らわせるために電話をくれる。
私は一瞬、母の身に何かあったのかと身構えながら通話ボタンを押した。
「お母さん、電話で泣いていたよ」
友人の声は沈んでいた。
最初はいつもの調子で話していた母が、父の話題になった途端、堪えきれずに涙をこぼしたという。
「何十年も一緒にいて、何もかも忘れられちゃった……」