2026年3月6日金曜日

配役の変わる舞台。父にとっての「東京の彼女」と母の涙

水曜日の昼過ぎ、iPhoneが震えた。

画面に表示されたのは、母が以前入院していたときにお世話になった、古い友人の名前だった。


父がデイサービスに出かけ、母がひとりになる水曜日。

友人たちはその時間を知っていて、孤独を紛らわせるために電話をくれる。


私は一瞬、母の身に何かあったのかと身構えながら通話ボタンを押した。


「お母さん、電話で泣いていたよ」


友人の声は沈んでいた。

最初はいつもの調子で話していた母が、父の話題になった途端、堪えきれずに涙をこぼしたという。


「何十年も一緒にいて、何もかも忘れられちゃった……」